「1-1. 写真家たち」カテゴリーアーカイブ

写真界の暗黒超新星が世に放つ、夜闇の世界。

Interview and text by Tomo Kosuga
[初出掲載:VICE.com日本版 2014年2月]


ここに差し出したるは、黒い布が無造作に継ぎ接ぎされた不気味な1冊。もしかして黒魔術書? デス・ノート? いえ、これは写真集です。
今年デビューしたての写真家、山谷佑介が自ら手がけたという手製の写真集。その名も『Tsugi no yoru e』(次の夜へ)。装丁からして反骨精神というか、怒り狂ったドブネズミが近くで息絶えたヤマアラシの背からハリを1本ずつ抜き取っては自分の背中に植え込んで血まみれになってる的な(言ってる意味分かる? オレには分からない)。
とにかくツンツンした感じがいかにもヤマアラシのジレンマで、本は読むためにあるけど、この本だけはなんか開けちゃいけない様な雰囲気がたっぷり。でもここはひとつ、空気を読まずに開けてみようか。

ページを開くとそこに広がるのは、夜闇(やあん)の世界。
クシで髪をかき上げるパンクスの後ろ姿、夜の海に飛び込む青年、布団に横たわる裸の男女、市松模様で綾取られたライブハウスの床を削るかのように踏み込むロカビリーやパンクスたちの足……。
明けることのない闇の魅力に取り憑かれた連中が、匿名性の高い切り口によって写真に収まる。

不浄、あるいは総天然色ならぬ〝総ケガレ色〟とも言えるモノクロ写真の仕上がりは美しく装飾されることを拒むかのようだ。実際、この本はボロ布に包まれているわけだから。でもマイナスとマイナスが掛け合わされるとプラスになるように『Tsugi no yoru e』は絶妙な負の要素が絡み合うことで独特の魅力を放つ。そう、つまりオレたちはこういう写真(集)を待っていた!
そんなこんなで、山谷が作りだした暗黒の写真集『Tsugi no yoru e』(限定150部、2013年)は出版社や本屋を通すことなく、その年のうちに完売。ヤマアラシのジレンマを実践するかのように、人々の注目を浴びるよりはるか前に、暗闇へと静かに消え去ったというわけ。

この時代にストレートフォトを強烈な個性でぶっ放した山谷。1作目にして作家としての方向性は固まったかと思いきや、新作『ground (dance)』では全く異なる角度から新境地を切り開いた様子。
大雪が降り止まないバレンタインデーの2月14日、山谷がなにやら巨大な〝板〟を雪除けにしながらやってきた……。
 

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未知の惑星…!? 多くの謎に包まれた〝青い炎〟の真相に迫る。

Interview and text by Tomo Kosuga
[初出掲載:VICE.com日本版 2014年2月]


男はそもそも旅が好きだった。カメラはたまたま知人から譲り受けたから持ち合わせていたのであって、そのほかと同列の荷物に過ぎなかった。人の運命とは、こういうことを指すのだろう。
1996年、ロスでスクウォッターとの共同生活を始め、自然とシャッターを切り始めた。その後、ロスのチカーノギャングを撮影。そしてフィリピンはマニラのスモーキーマウンテンを訪れ、ゴミ拾いで生計を立てる人々をフィルムに刻んだ。さらに今年、いよいよ宇宙へ——?
男の名は名越啓介という。相当クレイジーな日本の写真家だ。

世界一ピュアな 伝説のパパラッチ小僧

Interview and text by Tomo Kosuga
[初出掲載:VICE.com日本版 2014年1月]

パパラッチ——。正直、あまりいい響きの言葉じゃない。そういうイメージが根づいたのも、90年代にダイアナ妃がパパラッチの執拗な追跡によって帰らぬ人となってしまった事件は大きかっただろう。
金さえ手に入るのなら、人様のプライベートなんてお構いなし。世界中どこまでも追いかけて、時には人を死にも追いやる……。まさしく人間のクズと言ってもいいパパラッチ業界において、例外とも言えるほどジェントルマンな人物がいる。

〝Brooke Shields and Gene Simons KISS〟

彼の名はブラッド・エルターマン。どんな著名人を眼前にしても、心のカーテンを開けてしまう凄腕のテクニシャンだ。いまでこそ第一線から退いているが、70年代に16歳の時分からキャリアをスタートさせ、音楽業界、映画業界の大物を前に、なんともリラックスしたパパラッチ写真を残している。
というか、ブラッドの写真はパパラッチであり、パパラッチじゃない。有名人を待ち構えるところまではパパラッチだが、いつも笑顔で人懐っこいブラッドは出会ってからのコミュニケーションで瞬時に関係性を築き上げる。結果、出来上がるものはパパラッチ写真を超えているというワケ。ブラッドのパパラッチ写真は、まさしく70年代のエネルギーを正面から受け止めた時代の記録だ。

VICE Photo Issue 2013 | 田附勝 × KYOTARO

今年11月に限定配布したVICEマガジン『フォトイシュー』日本版から、寄稿作家の田附勝氏、KYOTARO氏がコラボ作品を語る。制作期間、実に半年! 満を持して公開されたコラボ作品2点の秘話を徹底解説。
2013年のVICEマガジン『フォトイシュー』、特集内容は『アーティスト・コラボレーション』。世界から集まった全30名のアーティストが織り成すスペシャルなコンテンツが凝縮された本号。発刊から数日で街から消え去った貴重な本誌は、如何にして生まれたのかー。

VICE Photo Issue 2013 | 中島大輔 × 小田島等

今年11月に限定配布したVICEマガジン『フォトイシュー』日本版から、寄稿作家の中島大輔氏、小田島等氏がコラボ作品を語る。美男子と海洋生物の絡みに潜む、意外なテーマとは……!?

2013年のVICEマガジン『フォトイシュー』、特集内容は『アーティスト・コラボレーション』。世界から集まった全30名のアーティストが織り成すスペシャルなコンテンツが凝縮された本号。発刊から数日で街から消え去った貴重な本誌は、如何にして生まれたのかー。

本号コントリビューターのうち、ここ日本から参加のアーティストに制作過程を語ってもらった。

VICE Photo Issue 2013 | 新田桂一 × 駕籠真太郎


今年11月に限定配布したVICEマガジン『フォトイシュー』日本版から、寄稿作家の新田桂一氏、駕籠真太郎氏がコラボ作品を語る。新田氏が幼少時代から続ける「セルフポートレート」と、駕籠氏が手掛ける「特殊似顔絵」を組み合わせると……!?
2013年のVICEマガジン『フォトイシュー』、特集内容は『アーティスト・コラボレーション』。世界から集まった全30名のアーティストが織り成すスペシャルなコンテンツが凝縮された本号。発刊から数日で街から消え去った貴重な本誌は、如何にして生まれたのかー。
本号コントリビューターのうち、ここ日本から参加のアーティストに制作過程を語ってもらった。

現代の女性たちにかぐや姫の自由奔放さを見るインベカヲリ★

Interview and text by Tomo Kosuga
[初出掲載:VICE.com日本版 2013年12月]

写真界の超新星、インベカヲリ★が今年11月、初の写真集『やっぱ月帰るわ、私。』を赤々舎より刊行した。本書に収録された全92枚の写真は、インベが2001年から撮り溜めてきた膨大な写真群から選び抜いた女子ポートレートだ。

インベカヲリ★初の写真集『やっぱ月帰るわ、私。』(赤々舎 刊)

「ポートレートは鏡。それはあなた自身である」——。ドイツ写真の第一人者、アウグスト・ザンダーがそう語ったかどうかはともかくとして、1822年の或る日、フランスの地でニセフォール・ニエプスがボトルやグラスの並んだ食卓を半日かけて撮った1枚から始まった写真技術が、古くは紀元前1世紀のミイラ肖像画まで遡れる肖像画の長い歴史を緩さぶったのは歴然たる事実。
それまでの時代ではおよそ本人の人相とは似ても似つかない美形男女の肖像画が自画像として認められたのだから、晩年の皺くちゃ顔をしたエリザベス1世や突き出た顎のマリー・アントワネットは写真技術が誕生する前に生まれてさぞかし安堵のため息をついていることだろう。

VICE Photo Issue 2013 | 大橋仁 × 小池昌代


今年11月に限定配布したVICEマガジン『フォトイシュー』日本版から、寄稿作家の大橋仁氏、小池昌代氏が撮り下ろし作品について語る。大橋氏が今年放った衝撃の写真集『そこにすわろうとおもう』の真相とは? 小池氏による鋭利な分析は必見!
2013年のVICEマガジン『フォトイシュー』、特集内容は『アーティスト・コラボレーション』。世界から集まった全30名のアーティストが織り成すスペシャルなコンテンツが凝縮された本号。発刊から数日で街から消え去った貴重な本誌は、如何にして生まれたのかー。
本号コントリビューターのうち、ここ日本から参加のアーティストに制作過程を語ってもらった。

デコトラの田附勝、東北の限界集落に自らを「しまう」

Interview and text by Tomo Kosuga
初出掲載:VICE.com日本版 2013年9月


つい先月にも前代未聞の暗黒写真展を開催した写真家、田附勝がまたもやぶっ飛んだことをしたようだ。なんと、秋田県の中央に位置する上小阿仁村(かみこあにむら)の、さらに山奥にある八木沢集落を舞台に、写真展『みえないところに私をしまう』を開催中とのこと。
この写真展、東京から足を運ぶだけで軽く半日はかかる。誰がそんなところまで?という疑問は誰もがまず頭に浮かべることだが、そもそも八木沢集落は「マタギ集落」としても知られる土地なのだ。マタギとは、東北地方や北海道で古い方法を用いて狩猟を行なう人々である。これまで写真集『東北』や『その血はまだ赤いのか』、そしてタブロイド紙『5』にわたって、マタギと向き合って田附なだけあって、この村の訪問には運命的なものを感じ取ったようだ。
今回、秋田から東京に戻ってきたばかりの田附から届いた展示の光景とともに、田附から聞いた本展にまつわる「物語」を紹介したい。

「これは『KAMIKOANIプロジェクト秋田』の一環で……」田附が話を聞かせてくれた。「今年で2年目のプロジェクト。俺は今回、初めて参加した。もちろん村おこしの意味も含まれるんだけど、八木沢集落は今や限界集落。もう20人弱のお年寄りしか住んでないし、若い人が戻ってきて定住しない限り、村として変われる部分はそれほどない。だから俺は、この村が幸であれ不幸であれ、この現状をそのまま見せたいと思った」


田附は8月5日に現地入りした。「最初は上小阿仁村の旅館を提案されたんだけど、そこから八木沢までは車で30分近くかかる。それじゃ遠すぎるし、俺の今までのやり方って『デコトラ』でも『東北』でも〝見てみたい環境にとにかく自分の身を置く〟ってことだったじゃん? だから八木沢に泊まりたかった。それで村の公民館に泊まらせてもらって。毎朝おばあちゃんたちに挨拶して、時には一緒にご飯食べたりもしてたよ」
これまで『デコトラ』や『東北』といったように端的なタイトルが多く見られた田附だが、今回のタイトルは『みえないところに私をしまう』と、なにやら意味深だ。そのワケを訊くと、ひとつのストーリーを語ってくれた。
「展示の様子を見てもらえば分かると思うけど、村に寝泊まりした1週間で色んな人を写した。当たり前だけど、年寄りが多いんだよ。そんな彼らにとって、写真を撮られるのは稀なこと。それこそ昔だったら、写真屋さんに来てもらって撮ってもらうほど貴重なことだった」
「写真を撮らせてくれた人たちにはポラをあげたんだけど、受け取ったおばあちゃんの1人が箱を持ってきてさ。なにが入ってるのかと思ったら、出てきたのは写真アルバム。そうやって写真を大事に保管してるんだよね。それを見て、普段は日の目を見ない人生が〝しまわれてる〟んだなって。それで俺も今回、自分が八木沢を訪れて見たこと感じたことを〝しまおう〟と思ってさ。それでこういうタイトルなワケ」


展示場となったトタン小屋に入ると、中央に座した巨大な老人の顔クローズアップに思わず仰天するが、実は細部にわたって作り込まれていることが分かる。自然豊かな環境だけあって、木々や草花が目立つものの、中でも木々は写真のフレームを超えて繋がり合っていて、なにか超越した生命力が感じられる。これにはなにか意図があるのだろうか?
「八木沢集落にはほとんど人が残ってないんだけど、その反面、木がすごくてね。杉の木。人の住居に近すぎるってくらい、杉が家の周りに生い茂ってるんだよ。だから村の人に訊いてみたら、この辺りでは昔から木を植える習慣があったみたいでさ」

「秋田と言えば秋田杉が有名じゃん? 昔でこそ、木が大きく育てば、伐採して生計の一部にしていたんだろうね。でも今じゃ、それもほったらかし。人が減って、木が増えた。それが、この村の今なんだよね。その木を見てると、それ自体が人間のようにも見えてくるんだよね。木が人間化してるっていうかさ」
「写真を見てもらえば分かると思うんだけど、そういった木に、さらに今度はツルが巻きついてる。人間が持ち込んだ杉の木に、もともと住んでいた自然が対決しているようにも見えてさ。いろいろ思ったよね」

展示会場……というか展示場となった小屋は中が三畳ほどで、1人でも入ればいっぱいになる空間。その小屋を成しているのはトタン板だ。ずいぶん古びてガタガタの状態だが、田附にとってはかえってそれが良かったようだ。「この小屋はトタンで出来てるんだけど、トタンも人間と同じように朽ちていくんだよね。それって、この村にも通じるところがあるんじゃないかなって」

「この展示はこれから1ヵ月近くあるんだけど、誰かが見張ってるワケじゃないし、小屋も隙間だらけ。雨が降れば中の写真も濡れちゃうと思うんだよ。でも、もしかしたらこの場合はそれでいいんじゃないか?と思ったんだ。村も人も、トタンも写真も、みな朽ちていくものなんだってさ。それも含めて写真っていうかさ。そういう展示になればいいのかなって、今回は思ったんだよね」
デコトラ、東北、マタギ、縄文土器と、一貫して日本を写真に投影してきた田附勝。そんな彼が限界集落の村をキャンバスにした結果、生命の栄枯盛衰や悠久の自然、自然と人間、万能に見えて限りある人間の力、そんな状況においてもなお生き伸びようとする人々の生き様が『みえないところに私をしまう』という写真群に刻まれた。
なにかが「朽ちていく」感じにはもちろん経年劣化も含まれるが、時を経なければ出ない「味」というものもある。「侘び寂び」とはよく言ったものだが、日本ならではの美意識に則るなら、田附が本展で見せてくれるのは1つの村の歴史の断片であり、そこには光と闇の両面がある。そのどちらかに寄ることなく両面を露呈させたのが本展なのかもしれない。

思えば「デコトラ」にしても、時代と共にブームは去り、トラッカーたちは苦しい現実と向き合うことになるが、それでも「男」として惚れ込んだ愛車を維持するためにあらゆるものを犠牲にしながら、決して苦労は口にせず、愛車との人生を歩む。一見、新品に見えるデコトラも、パーツレベルでは廃車になったデコトラからの寄せ集めだったりもする。
『東北』にしても、期せずして田附は東北大震災の前後を写真で記録することになった。田附自身、自分が追いかけてきた東北の意味合いがまるで変わってしまったことに震災直後こそは戸惑いを感じていたが、その年にマタギの鹿猟再開を追った『その血はまだ赤いのか』、そして今回の秋田県の限界集落と、継続して現地を追いかけるなかから、なにかその写真に一環して通じるものがカタチになり始めている。

最後に忘れてはいけないのが、これは日本人にこそ見いだせる「日本らしさ」であり、そして目の前の現実を写し出す写真という媒体だからこそ、成し得る業だということ。
「日本」を追い求める写真家、田附 勝。その全貌を解き明かすにはまだまだ時間はかかるだろうが、この男なら一生かけて、その生き様を写真に刻み、そして我々に見せてくれるに違いない。
 
KAMIKOANIプロジェクト秋田2013】
「KAMIKOANIプロジェクト秋田」は、上小阿仁村の最奥地にある8世帯19人の小さな集落「八木沢集落」を主たる舞台として、そこに古くから伝わる伝統芸能、マタギなどの狩猟文化、祭事、食文化、生活文化など、地域固有の資源を最大限に活用しながら、現代芸術の新しい表現と結び、美しい山々が織り成す里山全体を文化芸術空間として創造していくプロジェクト。
http://kamikoani.com/

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田附勝公式サイト
http://tatsukimasaru.com/

【VIDEO】The Art of Taboo: 任航(レン・ハン)

中国は北京在住の27歳、写真家・任航(Ren Hang)。彼が繰り広げるヌードフォトには、常に中国当局の監視がつきまとう。写真展の検閲、撮影中の逮捕劇、ウェブサイトの強制閉鎖……。それでも彼がヌード写真を続けるのは、ひとえに彼の下を訪れるモデル志望の若者たちが絶えないことも挙げられるかもしれない。
抑圧の中においても自己表現を求めて止まない中国の若者たちの姿、心境、そしてその証言を映像に収めるため、VICEは今回、中国は北京市にある任航の自宅を訪れた。そこに待ち受けていたのは、決して狭くはない室内を埋め尽くすフレッシュな北京女子たちの生き生きとした姿。かくして、任航による現実を超越した撮影が幕を開けた。
もちろん任航が語ってくれた話も今後、貴重な証言となるだろう。中国国内におけるヌード表現はいかなる状況にあるのか? それでも任航が続ける理由とは――? 透き通った眼差しの奥底に潜む、若き中国人の生き様に迫る。