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十代終焉に見るアンゴルモア大王の巨影と進化論

Text by Tomo Kosuga
[初出掲載:VICE.com日本版 2014年3月]

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話は唐突だが、キリストのご加護を受けているアメリカでは人口3億人の1/3が進化論を信じていないらしい。

しかし我らが日出づる国、日本だって負けちゃいない。なんたって日本で「年を取ること」イコール「孤独」「この世の終わり」「誰も振り向かない」と、絶望の押し売り状態。年を重ねるごとに悲壮感が増していく現実に逆らうかのように、現代日本では「美肌」「赤ちゃん肌」「マイナス5歳肌」といったアンチエイジング運動がお盛んだ。

それもあるいは美容業界の刷り込み戦略が功を奏したからかもしれないが、とにかくキリスト教原理主義者から見ても、異様なほど現実と向き合えていないSF世界の人種へと進化した日本人。

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未来学者のレイ・カーツワイルは「近い将来、人工知能かポストヒューマンによって人類の科学技術は生物学的限界を超えて加速する。そのことをシンギュラリティと呼び、待ち望もう」と唱えながら、現在66歳の老いた身体をなんとかその日まで維持させるのに必死らしいが(実際、彼の肌は赤ちゃんのようにピチピチだ)、そんな彼にこそ来日してもらえば、この国で起きていることがまさにシンギュラリティだった!と感動してもらえるかもしれない。

高木みゆ『しょーもない私の十代が終わりました。』は2011年9月19日から突如として幕を開ける


続く10月。ホントにしょーもない日々がカレンダー形式で続く

そんな日本人にとって、誕生日ほど〝絶望〟の記念日はないだろう。なんたって1歳ずつ老いていくことをわざわざ人からお祝いしてもらう公開処刑日なのだから。ましてや俗にコドモとオトナの分水嶺とされる20歳、いわゆるハタチなんて、ともすれば天から恐怖の大王が降りてきてアンゴルモアの大王を蘇らせるんじゃないかというほどのガクブル非常事態。いやマジでそういう過去に心当たりのある人、きっといるはず。

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今日紹介する高木みゆも、ハタチのボーダーラインを超えることに異常なまでの恐怖を抱いていた1人だ。「とにかくハタチになるのが怖かった、オトナになりたくなかったんです」と語る彼女。来たるべきセカンドインパクトに立ち向かうため、手元のカメラをロンギヌスの槍に変え、100日の準備期間を設けた。「ハタチになる100日前から1日1本フィルムを撮ろうと決めて。その中から1日1枚を選び出し、その日が来るのを待ち構えたんです」


厳密に言うと宝くじは未成年でも買えるが、万が一にも大金を当てた際の行動には成人力が試される


この1枚だけは微笑んでいる様に見えるのは、アンゴルモアの大王の恐怖にまだ見ぬ主人の愛の力が勝ったからだろう

そしていよいよやってきた、12月28日の誕生日。さあ、彼女は如何なる行動に出たのか—。その答えはページ上部の写真群が教える通りだ。タバコ、酒、婚姻届、ドンキーの成人コーナー、競馬、クレジットカード、パチンコ、宝くじ……。姿形の見えない二十代の重圧から逃れるべく、思いつく限りの「成人行為」をやってはみたものの、ハタチを迎えたからといって聖人君子になれるワケでもなく、やはりしょーもない二十代像を重ねる辺りがリアルで好印象。

どれもこわばった表情がせっかくの彼女のかわいらしさをブチ壊してしまっているけれど、なにせ恐怖の大魔王とにらめっこしている最中の様子なのだから仕方のない話だ。

高木みゆ『しょーもない私の十代が終わりました。』11月分。もう止めてくれと言いたくなる

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巷じゃ十代は、半ばロストテクノロジーのように有り難がられるもの。それに対し、そういや十代ってしょーもなかったっけ……と我に返らせてくれるのが、高木みゆの『しょーもない私の十代が終わりました。』なのだ。


12月分。所詮、大学生活なんてこんなモンである

みゆちゃん、そんなに心配するなって! せめてかわいらしい君の笑顔を見せてくれれば、周りが自然と祝福してくれるから……と思っていた矢先、高木は自身のタンブラーをこのタイミングで新調したらしい。そこに写るのは……元気ハツラツな彼女のポートレート。そうそう、それでいいんだよ。これからも天使のような笑顔で俺たちを祝福してくれればそれでいい。なんたって、写真のなかのキミは永遠に年をとらないのだから……。
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それでも年を重ねるのが怖いと言うなら、ドラ焼きが大好物のネコ型ロボットをマジで作り上げて勉強机の引き出しに組み込んだタイムマシンで原始の時代まで遡り、「アマテラスオオミカミが天岩戸に隠れたのは日除けのタメだった! みんなで一緒にアンチエイジング☆」とか触れ回ってくれば、現代に戻ってきた頃にはみんな岩を背負って歩くイワ人間になっているかも。もっとも俺はそんな進化論、まっぴらごめんだけどさ。
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