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VICE Photo Issue 2013 | 大橋仁 × 小池昌代


今年11月に限定配布したVICEマガジン『フォトイシュー』日本版から、寄稿作家の大橋仁氏、小池昌代氏が撮り下ろし作品について語る。大橋氏が今年放った衝撃の写真集『そこにすわろうとおもう』の真相とは? 小池氏による鋭利な分析は必見!
2013年のVICEマガジン『フォトイシュー』、特集内容は『アーティスト・コラボレーション』。世界から集まった全30名のアーティストが織り成すスペシャルなコンテンツが凝縮された本号。発刊から数日で街から消え去った貴重な本誌は、如何にして生まれたのかー。
本号コントリビューターのうち、ここ日本から参加のアーティストに制作過程を語ってもらった。

大橋 仁、人類の明るい繁栄のため全財産をはたいて酒池肉林を撮り収める。

Interview and text by Tomo Kosuga
5b0e0190a8ec6dc605e1decb459cf9a2『凄絶ナリ』——。アラーキーこと、荒木経惟にそう言わしめた写真がある。赤く染まった写真は、一見では繊細で落ち着き払った雰囲気だが、よく見るとそれがシーツに染み渡った鮮血だと分かる。しかも異常な量の、人間の、血。それは、大橋仁の義父による自殺の光景だった。
第1発見者となった大橋、このとき19歳。救急車を呼ぶと同時に「目のまえ」の光景にカメラを向けた。その後、幸運にも一命をとりとめた義父の「つづき」を、大橋は追い続ける。カメラひとつで。この生死のジェットコースターをまとめたのが、大橋の処女作『目のまえのつづき』(青幻舎 刊)だ。
〝生きること、死ぬこと〟をきれいごとで描くことなく、裸一貫、カメラひとつでぶつかった。ページをめくれば、様々な感情に揺れうごく魂の咆哮が聞こえてくる。
そして次作『いま』(青幻舎 刊)が刊行されたのは、処女作から6年後のこと。10人の妊婦からオギャーと赤ん坊が飛び出すまでの1年8ヵ月と、幼稚園児たちの姿を写すことで〝いのち〟をシンプルに描いた。
『いま』の表紙を飾った1枚の鮮やかなブルーが、処女作『目のまえのつづき』の燃えたぎるレッドと対称的であることが象徴するように、この2冊は表裏一体の関係にある。しかし、一般的に直視しがたい、なんともダイレクトというか、いわゆるナマナマしい着眼点は変わらない。とくに出産シーンなんて、血みどろの赤ん坊がニュルルルッ!と出てくるところを一切の迷いなく(のように見える)、赤の他人の大橋が写真行為目的で撮ってるんだから、もうなにがなんだかワケが分からない。
それからさらに7年が経ったいま、満を持して大橋が新作『そこにすわろうとおもう』を赤々舎から発表。上記2冊でも十分すぎるほどハードコアな人だと思っていたのに、ここにきてその限界値を自らブチ破るような、トンでもない3冊目を誕生させた。柔かなタイトルとは裏腹に〝ああ、ハードコアってこういう意味だったっけ〟と唸らされるような激写、激写、激写。実に400ページ。A3サイズ。23,000円。どれをとっても、センセーショナル。
その全貌は、ぜひ本を手にとって確認もらいたいが、しいて言うなら、ニッポンとポルノを掛け合わせてできたエロザムライの股に生えた男性器型のサムライソード300本に、同じく300匹ものニワトリが無理強いされながら、甲高い鳴き声で「オーウ、ニッポルノー!」って奇声を発してる感じ。三国志の董卓もビックリの〝肉肉肉〟林ぶりである。トンネルを抜けるとそこは女性器が……いや、むしろトンネルが女性器だったのかも……。とにかく、この酒池肉林騒ぎのために大橋がバラまいた札束はというと、実に「ポルシェ」数台分。え、マジで?! そんなバブリーな響き、久しく聞いていなかった。
年の瀬も迫った12月末の凍えるような週末、彼のスタジオを訪問。生きること、現代アートへの怒り、解剖学、ご先祖様との意外な繋がり、そして新作のことなどなど、盛りだくさんの話を時間の許す限り、語り合ってきた1万字越えのロングインタビューをココに公開しよう……。

大橋 仁、人類の明るい繁栄のため全財産をはたいて酒池肉林を撮り収める。

Interview and text by Tomo Kosuga
初出掲載:VICE.com日本版 2013年

1万字越えのロングインタビュー、後編。前編を未読の人はコチラから

5b0e0190a8ec6dc605e1decb459cf9a2写真家・大橋 仁が、3rd写真集『そこにすわろうとおもう』を刊行した。A3サイズ、400ページ、23,000円。これだけのブッ飛び設定にもかかわらず、なんでも書店には並ばないらしい。

彼と話してみて感じたのは、大橋 仁が写真で追い求めるモノっていうのが、よく子どもがオトナにしてくるような〝困った質問〟に近いってこと。1作目が「死ぬってなに?」という問いかけだとすれば、続く2作目は「僕ってどうやって産まれてきたの?」。そして今回が「人はどうやって作られるの?」って感じ。

それぞれに対して答えるなら、「無になる」、「お母さんのおなかから」、「お父さんがお母さんのなかに入る」とでも答えればいいのかも。だけど、子どもってのはそんなんじゃ納得してくれないだろう。次第に、答えた側としても、ホントにそれで正しいのか分からなくなる。そもそもコトバで表現できるものなのか?と。いかなるときも万能だと思えた〝コトバ〟に、オレたちが裏切られる瞬間。

大橋の写真は、それくらいピュアな疑問を出発点にしている。だからかな、ものすごく刺激的なんだけど、たまに見たくもないものを見せられる場面があって、ドキッとさせられることも。つまりハッと驚かされると同時に、生理的な嫌悪感も感じるってこと(そしてそれは上で挙げたような質問をしてくるガキどもに対して抱く感情に近い)。

前置きはこのくらいに。とにかく彼から聞いた話をここに公開する。最新作のことはもちろん、写真を数で表現すること、恐ろしくホラーなご先祖様との意外な関係、果てには人類がいかに愚かでクズで無能かまで、彼の脳内で渦巻くモノを可能な限り、引っ張り出してきたぜ!