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VICE Photo Issue 2013 | 新田桂一 × 駕籠真太郎


今年11月に限定配布したVICEマガジン『フォトイシュー』日本版から、寄稿作家の新田桂一氏、駕籠真太郎氏がコラボ作品を語る。新田氏が幼少時代から続ける「セルフポートレート」と、駕籠氏が手掛ける「特殊似顔絵」を組み合わせると……!?
2013年のVICEマガジン『フォトイシュー』、特集内容は『アーティスト・コラボレーション』。世界から集まった全30名のアーティストが織り成すスペシャルなコンテンツが凝縮された本号。発刊から数日で街から消え去った貴重な本誌は、如何にして生まれたのかー。
本号コントリビューターのうち、ここ日本から参加のアーティストに制作過程を語ってもらった。

抜けた首の色気

Kago_Portrait奇想漫画家、駕籠真太郎。なんとも不謹慎なネタで溢れかえる彼のマンガは、マンガという枠組みを超え、早くも現代アートの領域に突入しようとしている。
そんな駕籠が最近ハマッているのが、タイを含む東南アジア全域に伝承される妖怪『抜け首』。普段は何の変哲もない人間だが、夜になると胴体から首と内臓が抜け出し、妊婦や子供を襲っては生血をすするという。このホラーでイミフメイな生命体は当然ホラージャンルでも人気の存在で、タイだけでも10本近い抜け首映画が製作されている。
抜け首のどこにそんなに魅力があるのか、全く理解ができないVICEはまず、駕籠の言い分をじっくり聞くことにした……。
——アムステルダムでの展示に続いて銀座/江古田/高円寺での巡回展と、展示続きの2008年でしたね。巡回展での展示はどんなモノだったんですか?
駕籠真太郎:巡回展のテーマは『抜け首』だった。コレはタイ/カンボジア/インドネシアの東南アジア一帯に伝わる妖怪のコトで、映画の題材としても使われてる。有名なのがインドネシアの映画『首だけ女の恐怖』っていうので、コレは抜け首系映画の中で唯一ソフト化された作品。いわゆる西洋のホラーとは異なったテ イストが好まれてか、カルト映画マニアのあいだでは有名なのよ。
この映画は僕も昔から知ってて、実際に観たコトもあったんだけど、その時は抜け首の映画な んてコレぐらいしかないと思ってた。でも実際には沢山の抜け首映画がタイで作られてるってコトを割と最近になって知ってね。「へー、こういうジャンルがあったんだ」と思って、さらに調べてみると、通販でも買えるのが判明したから集め出したんだよ。もちろん海外からの通販だけどね。
——抜け首って、ビジュアル的にはホラーというより、むしろギャグってカンジ……
たしかに現地以外の人にとってみれば、 “ちょっと特殊なモノ” っていう感覚はあるよね。でも現地の人たちからしてみれば真剣な恐怖の対象で、とにかくあっちじゃオオカミ男とか吸血鬼と同じくらいスタンダードな伝統オバケなの。でも映画にすると技術的な問題もあってか、ちょっと稚拙なカンジになっちゃう。そこがまたおもしろいんだけど、だからと言って、意識的に稚拙なカンジに作られたら面白くないんだよ。
それよりも、彼らがシリアスに頑張って作ったモノを第三者的立場から冷静に見るスタンスの方がイイ。例えば、日本でキョンシー映画を見るのと同じ感覚かな。抜け首に関しては3年くらい前にマンガのネタで使ったのが始まりで、それは単行本『夢のおもちゃ工場』っていうのに載ってる。 “抜け首をここまで重点的にやってるヤツも他にいないだろう” と思ったから始めたんだ。
——ここ最近、駕籠さんがやった抜け首モノを挙げるとどんな感じ?
今回の巡回展/同人誌/雑誌〈ベビーフェイス〉での連載/ガチャポンってカンジかな。大体その辺を全部やってみたよね。だから、このシリーズを世界中の抜け首マニアにアピールしたら売れるんじゃないかって思うんだけど。
日本でもマニアックな人は抜け首のコトを知ってるんだけど、もちろん知らない人の方が多いハズだから、このシリーズを見てもなんだか分からないって思うケースが多いかもしれないね。だからまずは映画を観て欲しいよ、相当インパクトあると思うから。新宿の〈TSUTAYA〉辺りだったら置いてるんじゃないかな。
——去年はタイに行ってきたらしいけど、ぶっちゃけコレ系DVDの調達が目的だったんでしょう?
まあそればっかりってワケじゃないけど、“現地で見つかればイイな” 程度には思ってた。でも実際にはぜんぜん見つからなくてね。嫁と一緒に行ったから、 あんまりヘンなトコにばっかり行くワケにもいかないし。あるトコにはあるんだろうけど、タイはモノの回転が速いから、在庫もどんどん変わっちゃうみたい。だから古い映画になると手に入らないみたいだね。
——抜け首の魅力を一言でいうと?
抜け首って、たいていが女性なんだよね。女性の首が抜けて、さらにその下に内臓がブラ下がっている状態が、グロテスクでこそあれど、特殊なエロティシズムを醸し出している。そういうトコを、好き者が好んでくれるかもしれない。
抜け首って、基本は普通の生きた人間なの。普通の女性がなんらかの呪いにかかって、自分の意志とは無関係に夜な夜な首とその下の内臓がスポッと抜けちゃう。まるでオオカミ男のようなモノで。それから「こんなワタシの恥ずかしい姿を見られちゃった」的な一種の恥じらいも相まってイイカンジになるんだよね。
——抜け首って、よく見ると内臓出まくりで弱点だらけじゃん!
ね、内臓晒しちゃってるからね。
——今回はなんだかいつもと雰囲気がちがって、ギャグっぽさがなくて。シリアスに感じたけれど?
僕がふだん描く絵はいわゆる “純粋なエロ” ではなくて、 “下ネタ” だと自分では思ってる。僕はエロにも大雑把に3パターンあると考えていて、それが『エロ』『エロス』『下ネタ』なんだ。
『エロ』は純粋に実用性のあるモノ、『エロス』は確かにエロ的な部分もあるけど少しアーティスティックなモノ、 そして『下ネタ』は子どもが「うんこうんこちんこちんこ」と言ってるようなレベルのモノ。僕の場合は下ネタなんだよね。そういう傾向も、おそらくは性格的な問題なんだと思う。“マジメにやるのがキライ” みたいなトコあるからね。
——それじゃ、今回の抜け首は “エロス” ってコト?
そう、エロスだね。アレを下ネタとはちょっと言いずらいかな。アレは日本よりもむしろ海外ウケすると思う。抜け首自体、どちらかと言うと日本ではほとんど知られてなくて、むしろ欧米の方がマニアもいると思うんだ。
——最近はアニメも製作してて、いろんなトコで上映してますね。アニメを作り始めたきっかけは?
いちいち実写で撮影しなくて済むからかな。アニメはアニメでもちろん手間ヒマはかかるけど、机の上だけで済むでしょ? 実写の場合はそういうワケにいかないからね。実写でアニメの内容をやってたら、大変なコトになっちゃうしさ。
——そう言えば最近、 〈SAME HAT! SAME HAT!〉 でよく取り上げられてますね。海外からの注目も高まってきたんじゃないですか?
そうそう、あそこは僕のコトをとてもフィーチャーしてくれてるみたいなんだよ。この前の江古田での展示でもその関係の人が来たからね。「ブログに載せてもイイか?」って言われたからドコに載るのかと思ってたら、〈SAME HAT! SAME HAT!〉 だった。
あとこないだインドのテレビから取材を受けたんだけど、僕が自主映画を作ってるコトを言ったら、その取材にやってきたスタッフ2人を出演者にして、僕が映画撮影してる風景をさらに後ろから撮影したいって言われて。コミケにも取材で同行してきたり。しかもその番組は〈NHK〉と共同製作らしいんだけど、 〈NHK〉で僕のコトなんか流せるのかナゾだよね……
ゴメン、ちょっと電話してもイイ? なんかガチャポンの色塗りが出来たみたい。あれ全部手作りで製作から色塗りまで全部やんないといけないから、さすがに一人でやってるとちょっとしんどいから、知り合いに頼んでるんだ。■
彼の作品の多くは彼のオフィシャルから購入するコトが可能。
http://www1.odn.ne.jp/~adc52520/
〜 駕籠真太郎による抜け首ヒトクチ講座 〜
Nuke_01
『Krasue Gad Pop』(1990年)
抜け首のほかに別の女妖怪も登場。森の中で猫パンチのようなゆるい殴り合いの妖怪頂上決戦が始まる。
nuke_02
『Krasue Grahailuead』(1995年)
男に強姦されそうになったところを助けてくれた老婆。しかし老婆は抜け首妖怪だった!
nuke_03
『Krasue Valentine』(2006年)
比較的最近の抜け首映画。首が飛行する場面はCG合成が使われており、技術の進歩がうかがえる。お花畑を舞う、内臓ぶら下げた生首! ブラボー!