風雲現代刺青伝

Interview and text by Tomo Kosuga & Nuri Yosh
[初出掲載:VICE.com日本版 2014年1月]

話は唐突だが、「男子皆黥面文身」という一文をご存知だろうか。男子は大人と子どもの区別なく、誰もが顔や体にいれずみをしていた—。これは中国の歴史書『魏志倭人伝』(三国志魏書東夷伝倭人条)にある一節である。時は3世紀末、弥生時代の最中にあった日本列島を、西晋の陳寿という人物が訪れた。そこで出会った男たち(倭人)の全身に彫られた刺青を、陳寿は「男子皆黥面文身」と記しているのだ。
日本の歴史を振り返れば、古くは縄文時代まで遡れる刺青文化。社会的地位や宗教的側面から、かつて刺青は身体装飾として重宝されていた。しかし時は江戸時代を迎え、犯罪者の腕に前科の証拠として刺青を入れる「入墨刑」が普及。加えて現代では暴力団関係者が組織帰属のシンボルとしたことで、すっかり〝反社会〟の色が強くなった刺青。そのためだろうか、ここ日本では刺青を入れるにしても、服の下という暗黙のルールがあるほどだ。
かつての倭人に見るような「黥面文身」はもはや文献だけのものかもしれない。そう信じる人も少なくないはず。今日紹介する男の存在を知るまでは……。

作家、高村裕樹(たかむら ひろき)さん。今年56歳になる彼は、2010年に小説『宇宙旅行』で作家デビュー。これまでに4冊の本を出版している。現在は最新作『刺青師牡丹』がタトゥーの総合情報サイト、タトゥーナビに掲載されている。ただしそのこと以上に高村さんを特徴づけるのは、全身に隙間なく彫られたタトゥーの数々だ。