〈後編〉北京の蟻と鼠は大成を夢見る

「かつて地下室に暮らしていた時は、掛け布団も敷き布団も、常に湿っていた。あまり気持ちのいい場所じゃなかったね」。遠い目で語ったのは、まだ顔にニキビが残る21歳。金 静龍(ジン ジンロン)さんだ。そのとなりは張 福順(チャン フシュン)さん。 彼らはウェイターとして、我新街口にあるバーで働く。

向かって左が張さん、右が金さん。后海をバックに臨んで

古い街並みが残るこの辺りにはバーやショップが建ち並び、海外からの観光客を楽しませてくれる。近くの后海に浮かぶ、幾つもの船。燦々と降り注ぐ陽光。バーから運ばれるギターの音色。「北京に来て3年半になる。ウェイターの仕事は比較的簡単だよ。それに、僕は割と歌うのが好きなんだ」と語るのは張さん。
「実を言うと、僕は夢に一歩近づいている。店長が僕にギターを練習させてくれたんだ。2ヵ月経ったら、店で歌手にしてくれるって。ほかにも、ネットで主催しているコンテスト『半曲成名』で全国6位になったこともあるんだよ」
「俺はまだ……大して変化はないね。夢はまだまだ遠い」と語るのは金さん。「俺の夢はたくさん稼ぐことさ。そして故郷に戻り、祖先の名を上げる。他にはなにもない。とにかく金をたくさん稼ぎたい」。地下での暮らしはどうだったのかを訊いた。「部屋がにおうんだ。寝床が湿気ていたからだろう。そして寝れば汗をかく。元から湿っぽいのに、そのうえ汗をかくものだから、身体が痒くなることもあった。部屋は小さく、日当たりもない」