現代の女性たちにかぐや姫の自由奔放さを見るインベカヲリ★

主に女の子ポートレートを手掛けるインベが2001年から撮り下ろしてきた女子の数は優に100人を超える。モデル志願者はインベカヲリ★のウェブサイトに掲示された募集を見て応募メールを送る。
どんな家族の下で育ってきたのか?友達からはどう思われている?自分で気に入っているところは? 10年後の自分の展望は…… 時に4時間を超えるモデルインタビューで人格や個性をえぐり出し、インベは写真に投影する。出来上がった写真を見て、たとえば「彼女たちは月からやってきました」と言われても違和感なく感じてしまうのは、ひとえに月光にも似た一灯当てのライティングに包まれているからだろうか。

『アンナチュラルごっこ – 1』(2013年) Copyright © Kawori Inbe

インベカヲリ★が繰り出す女子ポートレートの醍醐味は、見る者が男性か女性かでまるで異なる反応が得られることでもある。自然体で露呈されるインベのエロスは明らかに男性が期待するそれとは異質なものであるし、時には男性が勝手に定義づけたエロスの常識を容易に飛び越え、それ自体が認識不可能な新記号かのように飛び込んでくる。
これはエロなのか、はたまた不可侵のタブーなのか—。こうして男性がパニックに陥る傍ら、女性はあっけないほどすんなりとインベのポートレート写真を受け入れてしまうようだ。「女性とはかくあるべき」と一般論を押しつける世間体と沈黙の睨み合いを繰り広げるモデルたちと、月からの啓示を受けて女性解放に奮闘するインベカヲリ★の勇姿は日本女性の眼にジャンヌ・ダルクのように写っているのかもしれない。
私は10月下旬、写真集の印刷の最中にいたインベカヲリ★のロングヘアーを半ば強引に引っ張るような勢いで連行し、写真集発刊に至るまでの経緯や写真について、たっぷりと話に花を咲かせた。