東北の森で野ジカを追い、その暗がりに太古日本のクオリアを見出す

KURAGARIに潜む太古日本のクオリア

このように、我々日本人がシカを見て想起させることを全て挙げようものなら枚挙に暇がない。しかし西洋文化から見ればやはり依然として『KURAGARI』は〝deer in the headlights〟に留まるものかもしれない。
だとすれば、敢えて言おう。『KURAGARI』から引き出せる原始的感覚が日本と西洋では異なり、ゆえに科学的根拠を持つ〝deer in the headlights〟を眼前にしてなお、私たち日本人が感じ取る感覚は信じるべきものだと。
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哲学の分野に「クオリア」という概念がある。これは〝主観的体験に伴う物の質感〟を指す概念だ。たとえば人は空を見て「青い」と感じるが、そのように言語化や記号化される以前の感覚的な体験をクオリアと呼ぶ。
つまり〝deer in the headlights〟が西洋医学を文脈にした科学的解釈だとすれば、神鹿や荒覇吐を起源とするシカの畏怖に満ちた神々しさが私には、太古より日本人が引き継いできたクオリアのひとつのように感じられるのだ。