東北の森で野ジカを追い、その暗がりに太古日本のクオリアを見出す

時空を超えて蘇る古代日本人の記憶

森は、太古の姿を辛うじて維持し続ける環境だ。そして鹿たちはおそらく、はるか昔からそこに生息するのだろう。田附さんが出くわした「森の中のシカ」という状況は、人類と自然の時空を超えた接触だ。太古の日本人も、かつて目にした光景のひとつに違いない。写真のなかでシカを照らすライトの光をそっくりそのまま松明(たいまつ)と置き換えて考えれば、想像にたやすい。
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「この写真のなかで……」本作について田附さんに話を聞いた。「こっちは光を照らす側から暗がりを見てる。決して闇のなかから闇を見てるワケじゃない。つまり保証された側、人間の側から闇を見てるんだよ。それだけに最初の頃は、あっちの世界に恐怖を感じたよ」
まさしく我々が『KURAGARI』で目の当たりにするのは、原生林のなかで出くわした〝得体の知れない恐々とさせるもの〟である。