大橋 仁、人類の明るい繁栄のため全財産をはたいて酒池肉林を撮り収める。

——最後に、もうひとつ。前にロスでVICEの写真展に出展してもらったとき、なにを展示しようか話し合ったじゃないですか。それで大橋さん、電話越しで『実は最近すんごいの撮っちゃったんだけど……首つり。どう?』って提案してくれて。結局それは使わなかったけど、どんな現場だったんですか?

そうそう。今回の写真集でも入れたよ。プライバシーを考えて目線は入れたけどね。でもオレは別に、そこらの家に忍び込んで見つけたワケでもなくてさ。お母さんと赤ん坊が散歩している午前10時の公園で、たまたま発見しただけで。六本木の公園でロケハンしようと思ってさ。ペンタ67を首からブラ提げながら。
ヒマな連中がスポーツ新聞読んでるなかを歩いてたら、ハッと生け垣から首がひょっこり出ちゃってた。〝あっ、来た…!〟と思って。だからオレが第1発見者。警察来るまでの10分くらいで、三脚ビシッと立ててさ。ブレたくないの。バシッと67で、ガシンッ!ガシンッ!って撮ったよ、彼はすごい迫力だったね。

——死んだあとも写真に撮られるって、どういう気分なんでしょうね。

ハッキリ言って、わからない。そして、死者を冒涜する気も決してないよ。でも、オレが首からカメラをブラ提げた状態で出会っちゃってるんだから。それはもう、撮らざるを得ないでしょう。それはムリだわ。あそこでオレが撮らないのはムリだよと。それは理解して欲しい。それは彼も覚悟のうえで、見つかるような場所でやってるワケだしさ。
オレはもう勝手に彼のことを出会いだと思ってる。あの瞬間から我々は友人なの。名前は知らないから、オレは〝首吊りの彼〟ってよく言うんだけど。自分の写真集に姿を残した人っていうのは、たとえ知り合いじゃなかったとしても、たとえ風景的な群衆のなかの1人でも、ひとつの関係ができたと思ってる。だから〝首つりの彼〟も、今ではわりと親しい友人だね。

——今回の写真集見て、このテーマ、この大きさ、あの値段。大橋さんもう死んじゃうのかな?って思っちゃいましたよ。だけど今日って、2012年12月22日じゃないですか。マヤのカレンダーでは今日から存在しない日なんですよね。だけどこの日常が相も変わらず続いてるのを見る限りでは、まだまだ人生ってのは続くみたいですね。

あっ、そうだったのォ? とんでもないね、全然終わってないじゃん! ハハハッ! やっていくしかないねえ。でもホント、最後は殺し合いになって終わりたくないね。人ってはどうしても下等だから。人の物をとりたいし、野蛮だよも。 ホーキング博士も言ってたよ。地球以外の高度文明がなぜ見つからないのかと言ったら、知的生命体になれば争いで自滅する可能性が高いんだと。とっくに自滅したんじゃないかって。最終的に地球も自滅しないといいですけどねって。
やっぱり知的生命体じゃないんだよ、自滅するようなヤツらは。そんなのホントにいるとしたら、寿命を延ばしていくハズだもんね。そのために考えるし、そういう体になっていくと思うんだよ。とにかくオレに関しては、別に作品でなにかに反抗してるワケでも、世間に言いたいことがあるワケでもない。ただそのとき思ったこと、そして興味のあることを純粋にやる。ただそれだけだね。


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