深瀬昌久『歩く眼《二》』(「日本カメラ」1983年11月号)

東京都の5万分の1の地図が壁に貼ってあって、歩いた所を赤いボールペンで潰していく。蛇行する線は川筋で、水源から河口まで長い川もあれば、短い川もあり、今まで12の川を歩いた。「神田川」、石神井川」、「呑川」、「仙川」etc。隅田川とか荒川などの大きな川はまだ歩いてない。今回は対岸の人と挨拶できるくらいの小さな川に限ったが、特に理由はない。なんとなくそうなった。街は地名を赤丸で潰していく。撮っていても近頃はほとんど高揚感はない。ただ、同じような川筋が街並が雑踏が、のっぺらぼうに眼を通過していくだけだ。