アルル国際写真祭 現地レポート

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南仏はアルルの地でいま、深瀬昌久の写真作品『窓から』(1974年)が展示されています。

1970年より毎夏開催される南フランスのアルル国際写真祭(The Rencontres d’Arles)。円形闘技場や古代劇場、公衆浴場など、古代から中世にかけての建築物が世界遺産に登録される歴史的な街ですが、これらに紛れ込むようにして写真の展示会場が街全体に張り巡らされます。

今年は全20会場以上あるうち、旧市街の中心に座するレピュブリック広場に会場を構えたのが、深瀬の作品も含まれた企画展「Another Language」。細江英公、森山大道、内藤正敏、須田一政、猪瀬光、野村佐紀子、横田大輔、そして深瀬昌久。イギリスの近現代美術館、テイトモダンのサイモン・ベーカーさんによって日本写真が紹介される展覧会です。

このために私たちが出品したのは、1974年に深瀬が当時の妻、洋子を被写体に写したシリーズ『窓から』。この題名が指し示す通り、当時二人が暮らしていた草加市松原団地の4階の部屋の窓から、出勤する洋子の姿を深瀬が日々記録したもの。ひとつとして同じポーズがない彼女の奔放なリアクションの数々。深瀬のとめどもない写真欲に応えるべく繰り広げられた、ユニークな即興パフォーマンスのようにも読み取れます。本作は1978年発刊の写真集『洋子』にその一部が掲載されたのみで、本展示が実に37年ぶりのお披露目となりました。

本展では、1970年に細江英公さんが俳優の四谷シモンさんをモデルに迎えて撮影された『シモン 私風景』と深瀬の『窓から』が拮抗するかのように向き合って展示されました。アマチュアの女性とプロの俳優によるそれぞれのパフォーマンスは現実と非現実の境を曖昧にします。それと同時に、それこそが写真というメディアの持ち合わせた一瞬の記録性によって成り立つ面白さなのではないか、と問いかけてくるかのようです。

現地時間の7月8日(水)午後には、参加作家の1人である横田大輔さんと共に、サイモンさんによる解説ツアーが行なわれました。これを聴かんと会場に集った数百人規模の観客が示したのは、日本写真への大きな期待。

本展は8月30日まで、実に2ヵ月近く展示され、アルルを訪れる世界中からの人々の記憶に刻まれることでしょう。

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会場となったEGLISE SAINTE-ANNEArles_AN_03 Arles_AN_04
この日、キュレーターを努めたサイモン・ベーカーさんによる解説ツアーが行なわれ、数百人規模の来場者が押し寄せましたArles_AN_05 Arles_AN_06 Arles_AN_07 Arles_AN_08
本展キュレーターを努めたサイモン・ベーカーさん
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会場には写真集『洋子』(1978年刊)も設置されましたArles_AN_10
展示された作品『窓から』17点Arles_AN_11
テレビクルーも連日取材に訪れていました